公益社団法人北海道柔道整復師会北見ブロック

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運動器疾患のリハビリテーションについて


 私達、柔道整復師は骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷といったケガの治療を専門とする運動疾患のプロフェッショナルを自負しています。

運動器疾患の概要
 運動器疾患とは、身体を支える、動かす等の身体活動を司る器官の疾患の総称であり、骨・関節・筋肉・腱・靭帯、及びそれらを覆う皮膚や軟部組織、また、それを支配する神経・血管などの疾患が含まれます。

 平成22年、日本において介護・支援が必要になった原因を見てみると、要支援者では関節疾患が19.4%と最も多く骨折、転倒も12.7%と第4位であり、
 要介護者においても骨折、転倒と関節疾患が第4位と第5位を占めています。
 平成20年の厚生労働省の疾病分類別に運動器疾患の患者数をみると、筋・骨格系及び結合組織の疾患の入院患者が6万8千5百人と全体の約5%を占め、また、外来患者は94万5千3百人と全体の約14%を占めています。
 運動器疾患は我が国の三大死亡原因疾患からは外れるものの、要支援・要介護に陥る原因となっていることがわかります。

 運動器疾患の治療は保存的療法観血的療法とに大別され、両者とも運動療法を中心としたリハビリテーションの対象となるわけですが、
 整骨院では地域の医療機関(病院・医院)と連携をとりながら保存的療法と運動療法を中心としたリハビリテーション(整骨院では後療法と呼びます)でこれらの治療にあたります。

 ちなみに、リハビリテーションとは広義のリハビリテーションと狭義のリハビリテーションがあり、広義のリハビリテーションとは単にケガや病気の治療のみを指すのではなく、ケガや病気により負った社会的不利を解消し健全な社会生活に復帰することを指し医療の専門だけではなく介護・福祉・教育(職業教育を含む)など様々な専門家や家族、地域の連携により本来の有るべき姿に回復させることですが、ここで言うリハビリテーションは 狭義のリハビリテーション、つまり医療技術として低下した身体機能の回復を目的としたものと捉え、ここからは“機能訓練”或いは“機能回復訓練”と呼んで行きます。

 保存的療法観血的療法
 簡単に説明すると手術を行う治療を観血的療法、手術をせずに行う治療を保存的療法と言います。
 保存的療法は骨折・脱臼の場合、折れたり外れたりした骨を元の位置に戻さなければなりません。この元の位置に戻すことを徒手整復といい、この徒手整復医師と柔道整復師以外は行ってはいけないと法律で定められています。
 また、骨折・脱臼の場合、応急処置として徒手整復が認められており、継続して柔道整復師が治療を行う場合には医師の同意が必要となることから徒手整復の後、一度若しくは数回、医療機関を受診して貰うことになります。

 運動器疾患の機能訓練
 前述の通り、保存的療法・観血的療法ともに運動療法を中心とした機能訓練が必要です。何故なら、例えば骨折の場合、折れた骨が付いたことで骨折自体は治ったことになりますが、受傷から骨が付くまでの間の固定や安静の為に関節が固まり動きずらくなったり(関節拘縮)、負傷した部位の周辺の筋力が弱くなったり(筋力低下)、また、今まで上手に出来ていた動作が巧く出来なくなったり(協調性・協応性低下)します。
 これらの関節拘縮・筋力低下・協調性低下はケガををしたことに伴って発生した二次的な機能障害と言えます。
 この“二次的機能障害”を出来る限り予防・改善するために“機能回復訓練”が重要となります。しかし、運動器の疾患は非常に多岐に亘り、その機能回復訓練のアプローチも各疾患によって異なってきます。


 サルコペニア・ロコモティブシンドローム・フレイル
 運動器の機能低下に関連してサルコペニア・ロコモティブシンドローム・フレイルという言葉が使われます。

サルコペニア(sarcopenia)とは、ギリシャ語の筋肉(sarx)と喪失(penia)を合わせた言葉で1980年に提唱され、元々は“加齢に伴う筋肉量の減少”を意味していたが、近年では“筋肉量の低下だけではなく筋力の低下や身体機能の低下”含まれるように考えられている。

 一方、ロコモティブシンドロームは、2007年に日本整形外科学会が提唱した概念で“運動器症候群”とも呼ばれ、運動器の障害により移動機能の低下をきたした状態と定義されている。つまり、サルコペニア(筋肉・筋力、身体機能の低下)+変形性膝関節症、骨粗鬆症等の運動器疾患により機能低下を来した状態

 また、フレイル(frairty)とは、2014年に日本老年学会が提唱した言葉で、身体機能・構造のみならず、精神神経機能、活動・参加を包含する広い意味合いを持っている。

フレイル


 上の図のようにサルコペニアを含む身体機能・構造の低下をロコモティブシンドロームと考えることが出来る。また、これを身体的フレイルと捉えた場合、精神神経機能低下を精神神経機能的フレイル、活動参加制限を社会的フレイルと捉えることができ、これらが互いに負の連鎖を引き起こし要支援・要介護状態に陥ってしまうと考えることが出来る。

 関節可動域制限
 関節可動域の制限は拘縮と強直に分けることができる。
拘縮とは関節構成体外の軟部組織の変性によって起こる可動域制限で、先天的に筋や腱などの短縮による先天性拘縮と外傷や炎症等が原因で二次的に起こる後天性拘縮に分類される。

拘縮の要因による分類
皮膚性拘縮火傷や挫滅等によりケロイド、皮膚の瘢痕化などにより可動域が制限される
結合組織性拘縮皮下組織や、腱など結合組織の癒着や瘢痕化により可動域が制限される
筋性拘縮廃用症候群などに起因する筋の短縮。阻血によるフォルクマン拘縮等も含まれる。
神経性拘縮痛み等に対する反射性の筋緊張や痙性麻痺による筋緊張など
浮腫性拘縮浮腫による可動域制限

 上記のように関節可動域制限を引き起こす要因として持続的な筋緊張、結合組織の増殖・肥厚化、疼痛、浮腫等が上げられる。

 また、長期間にわたり、不動や関節固定が続くと循環障害が生じ、浮腫やうっ血を引き起こし、さらに続くと硬い結合組織が形成され拘縮が発生し、また、循環障害は関節軟骨の変性を引き起こし強直へと発展する場合もある。

 強直は関節軟骨、骨、関節包、靭帯などの関節構成体の変性により生じる可動域制限で、関節面が骨性に癒着し完全に可動性を失ったものを骨性強直、関節の繊維性癒着により可動性が失われたものを繊維性強直と呼びます。
 しかし、臨床的には関節包や靭帯を含む軟部組織に起因する他動的な可動域制限を拘縮、関節の相対面の癒着による可動域制限を強直と用いられることが多い。

 また、長期臥床により、頸部は屈曲、肘関節は屈曲、前腕は回内、股関節は屈曲、膝関節は屈曲、足関節は尖足の拘縮を起こし易い。

 関節可動域制限に対し最も大切なことは予防であり、負傷後に安静や固定が必要な場合でも、患部以外の関節などに対し力学的な負担を強いらない範囲での可動域訓練を行い、二次的な拘縮の発生を予防すると共に、 良肢位を維持できるようにポジショニングや固定肢位を考慮しなければなりません。

 良肢位とは
 良肢位とは、ケガ等の治療で固定を行う際に一番治療に適し、また、できる限り拘縮を起こさせない事を目的とした肢位(姿勢)のことで、また、仮に拘縮が発生してしまった場合でも日常生活にできるだけ支障が生じない関節の角度等をいいます。
 例えば、歩くということを考えた場合、膝は曲がらなくても歩くことは出来ますが、曲がったまま伸びない状態であると歩くことは非常に困難になってきます。

 可動域訓練は筋力が保たれている場合には自動運動を中心として、筋力の低下が見られる場合には自動介助運動、或いは、他動運動を行います。
 ケガ等の治療に於いて固定・安静は非常に重要な事ですが、それに相対して可能な限り早期からの可動域訓練を行うべきであるという治療上の矛盾があります。
 可動域訓練の早期実施を目的として必要に応じ、CPM(コンティニアス・パッシブ・モーション)のような器具を用いる場合もあります。

 拘縮は殆どの場合、ストレッチングのような組織伸張法等の運動療法の適用となります。運動療法の実施の際には疼痛を感じない範囲で可動域の最終域に持続的伸張を加えることが原則で、温熱療法は関節包等の軟部組織を和らげ疼痛域値を上げる為、ホットパックなど物理療法を併用することも多く見られます。

 筋力低下・廃用性委縮
 ギプス等による固定や長期間の安静・臥床などにより骨格筋の委縮や筋力低下が起こります。廃用性委縮と呼ぶこともあります。
 人間は最大筋力の20~30%の運動を行う事で筋力が維持され、20%未満では筋力が徐々に低下して行くと言われています。
 その為、筋力訓練も早期実施を図ることが重要であり、その訓練は過負荷の原理に基づき訓練を行います。
 過負荷の原理とは、通常の日常生活で使われる筋力よりも強い負荷を与えることで筋力は増強し始めるという考え方です。

 ギプス等による固定期間や筋力増強訓練初期では関節の運動を伴わない等尺性筋収縮運動が有効で、その後、関節運動を伴う等張性筋収縮運動に移行していきます。筋力の低下により運動を上手く行えない場合には自動介助運動で補助をしながら運動を行います。

 臨床的に負荷量の決定には10RMが多く用いられます。10RMとは10回繰り返すことが出来る最大負荷のことです。
デロームの暫増抵抗運動は代表的な方法の一つである。

筋力増強運動の分類
等尺性筋収縮
(アイソメトリクス)
関節の運動を伴わない運動方法
例えば、固定された物を押したり引いたりする
等張性筋収縮
(アイソトニスク)
関節の運動を伴う運動方法
例えば、バーベルを持ち上げる(遠心性)、或いはバーベルをゆっくり下ろす(求心性)
等速性筋収縮
(アイソキネティクス)
一定の速度で移動する負荷を押し続ける
可動域の全角度に於いて次々に角度を変えながら、繰り返し等尺運動を行っている
開放性運動連鎖
(OKC)
身体の末梢部位が移動する運動方法
例えばベンチプレス
閉鎖性運動連鎖
(CKC)
身体の中心部分が移動する運動方法
例えば腕立て伏せ
 等がある


 疼痛について
 疼痛は殆どの運動器疾患で有する症状であり、機能訓練の大きな阻害要因となる為、痛みの訴えを理解し疼痛の軽減を図りながら訓練を行うことが重要である

 疼痛は急性痛と慢性痛に分けることができ、急性痛は病変組織に分布する痛み受容器の興奮によって起こり、針で刺すような一次痛と熱刺激を与えられたような二次痛がある。
 慢性痛は急性痛が時速した急性反復痛と神経系の可逆的ない異常によって生じる慢性痛症があり、臨床的に加重痛、歩行時痛、屈曲痛、伸展痛、捻転痛など様々に区別される。

 疼痛の客観的評価にはビジュアルアナログスケール(VAS)やニューメリックレイティングスケール(NRS)等がある。

 疼痛は、薬物療法のみならす運動慮法、物理療法の適用となるものが多く、 運動療法ではマッサージ、ストレッチング、モビライゼーション、筋膜リリースなどの徒手療法、物理療法ではホットパック、電気治療器、牽引治療器等があり、これらを併用して行われる場合が多い。


 脊椎圧迫骨折
 脊椎圧迫骨折はシリモチや転倒等により脊椎に大きな外力が加わった時に発生しますが、骨粗鬆症を基盤としクシャミや座り動作、重たい荷物を持ち上げる等比較的軽微な外力によっても発症することも多くあります。

 急性期は腰部痛や背部痛を認め、多くの場合、発症後、約1~2週から1ヶ月程度で疼痛が軽減し徐々に歩行も可能になりますが、慢性期には骨折は治癒するものの椎体の破壊は進み脊椎の楔状変形を伴い脊髄圧迫による遅発性の神経障害を来す場合もあります。
 また、骨折部の上下椎体に力学的なストレスが集中することで脊柱の後湾が進み慢性的な背部痛、腰痛が発生します。

 多くの場合は保存的療法が選択され、コルセットを装着しベッド上で安静を保ちます。
偽関節の発症を防ぐためベッド上の安静は2週間程度とし、その後、硬性コルセットを装着し体幹筋群の強化、歩行訓練等を行います。脊椎圧迫骨折の代表的な運動としてベーラー体操が上げられます。

 観血的治療には椎体形成術や前方及び後方除圧固定術があります。観血的治療によって早期離床、早期退院、疼痛軽減、アライメント改善が図れる一方、隣接椎体の圧壊や新規の脆弱性椎体骨折のリスクがあるため十分に注意しながら運動療法を進めます。

 また、再発予防のため筋力強化のホームエクササイズ指導や日常生活指導が重要となります。

 前十字靭帯損傷
 ACLと呼ばれる前十字靭帯は大腿骨外側窩内側面から前内側に走行し脛骨の前窩間区に付着した、脛骨の前方変位を制動する靭帯でありバレーボール等のスポーツ競技で損傷することが多いです。 ACLは前内側繊維束と後外側繊維束に分けられます。受傷時に激痛とともに断裂音を体感することが多く、数時間内に膝関節は著しく腫脹し関節血症を認めます。 陳旧例では動作時に膝崩れを繰り返し、半月板損傷や軟骨変形に発展してしまいます。

 診断では前方引き出し徴候やラックマンテスト等の徒手検査で確認できます。  前十字靭帯損傷は治癒能が低い為、保存的療法では日常生活レベルでの症状改善は期待できるものの、スポーツ復帰を目指す場合は靭帯再腱術が必要となります。

 前十字靭帯損傷の治療では自家腱を利用した再腱術が一般的であり、膝蓋腱や半腱様筋がよく用いられます。 再腱術は通常、受傷後3~5週程度に行うことが望ましいです。受傷直後は炎症症状の鎮静化を目的としたアイシングを主体とした処置を行います。 術後4日目より愛護的関節可動域訓練を0~130°を目標に開始し、術後3~4週で他動的な完全伸展の再獲得を目指します。 大腿四脳筋の伸展域で前方断裂力を増加させ、ACLにストレスを加えるので筋力強化は膝装具を用い伸展を制限しながら進めます。 歩行は術後7日目辺りから部分加重にて開始し2週目には全加重となります。 最終的なスポーツ復帰はおよそ9カ月程度かかります。
 手術の方法として、最近は膝屈筋腱と人工靭帯を組み合わせたハイブリッド型移植材料を用いた方法も行われいる。

 内側々副靭帯損傷
 MCLと呼ばれる内側々副靭帯は大腿骨内側上果から脛骨内側果に付着しており、外反ストレスに対する一次支持機構を果たしており、ラグビーや柔道といったコンタクトスポーツで膝に外側から外力が働いた時に受傷することが多いです。 内側々副靭帯は前十字靭帯に比べ治癒能が高く保存療法で良い成績が得られることが多いです。
 症状として腫脹、圧痛、関節可動域制限を認め、膝関節20°~30°で外反ストレステストが陽性となります。 伸展時での同テストが陽性の場合、前十字靭帯損傷との合併も考えられます。 さらに慢性期では著しい外反動揺が認められます。 内側々副靭帯単独の損傷であれば症状に応じて装具療法による保存的治療を行います。 4週~6週でスポーツ復帰が可能となり予後も良好です。
 前十字靭帯損傷を合併している場合は再腱術が適応をなります。 内側々副靭帯は治癒し易い半面、治療組織は周囲組織との癒着が生じやすく拘縮を認めやすいので早期から関節可動域訓練を進めます。

 大腿骨頸部骨折
 大腿骨頸部骨折は骨租鬆症を有する高齢者が転倒し臀部や大転子を打撲した際に発症することが多いです。
 大腿骨頸部骨折は骨折部位を基準に関節包の内側と外側に分けられ内側骨折の場合、骨折部に外骨膜がなく骨膜性仮骨が形成されない上、骨頭への血流が途絶えてしまい骨癒合が不良となります。 また、外側骨折では骨頭の血流が保たれ骨膜性仮骨もあるため骨癒合が得られ易いです。
 治療方針の決定にはガーデンの分類が用いられます。

 ステージ1或いは2で自発痛が無い場合は4週~6週の安静臥位と介達牽引のみとなりますが、
ステージ2で自発痛があり運動不能、股関節外旋で疼痛が増悪する場合は骨接合術が適用となります。

 ステージ3で容易に整復可能なものは骨接合術を整復困難な場合、またはステージ4は一般的には人工骨頭置換術を行います。術後はベッドサイドから早期にリハを開始し廃用症候群や合併症を予防し全身状態の改善を図ります。

 骨接合術の場合、術翌日から車椅子に乗車し積極的に立位・歩行訓練を進めます。
また、人工骨頭置換術でも術後二日から三日にて車椅子に乗車し痛みに応じて加重訓練を進めます。

 変形性股関節症
 変形性股関節症は関節軟骨の変形、関節破壊とそれに対する反応性骨増殖を特徴とする疾患で股関節痛、関節可動域制限、跛行を主症状とし日常生活を大きく制限します。
変形性股関節症は原因不明とする一次性変形性股関節症と先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全にともなう二次性変形性股関節症に分類されます。
 我が国では一次性が少なく二次性が約80%を占めています。変形性股関節症の治療は保存的治療と観血的治療に分かれます。
 保存的治療は運動療法を主体とし股関節及び脊柱の可動域訓練、大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋等の股関節周囲筋全体の筋力増強を行います。
 疼痛を認める場合は温熱療法も併用します。また、杖による免加歩行、体重減量も指導します。
 さらに最近では股関節の加重軽減、不安定性の改善を目的とした装具療法も行われます。

 観血的治療は寛骨臼回転骨切術といった関節温存手術と人工関節置換術があります。 寛骨臼回転骨切り術は骨性臼蓋を改造して骨頭の被覆を改善するものです。
 術後二日から四日にてベッドサイドリハを開始し三週後あたりから部分加重を開始します。 そして術後4カ月をめどに片松葉づえ歩行を目指します。
 人工関節置換術は耐久性が約20年と言われており、60歳以上の末期股関節症が適応となります。術後早期から関節可動域訓練、筋力増強訓練を開始し同時に疼痛自制内にて平行棒内の歩行訓練を開始し股関節周囲筋の筋力増強に合わせて加重量を増加して行き、そしてT字杖歩行を目指します。
 また、最近では術後の疼痛の軽減、軟部組織侵襲の軽減等を目的として最少侵襲手術(MIS)が行われるようになってきています。

 ※人工股関節置換術(THA)・人工骨頭置換術(BHA)後の禁忌肢位
 後方アプローチでは屈曲+内転+内旋、前方アプローチでは伸展+内転+外旋

 変形性膝関節症
 変形性膝関節症は膝関節軟骨の変性によって発症し軟骨仮骨の退行変性と増殖性変化を来し疼痛、関節拘縮、変形、膝関節周囲筋委縮などの症状を呈する疾患です。
 我が国でも変形性膝関節症の患者は増加しています。変形性膝関節症の治療はまず日常生活活動の指導、体重減量、大腿四頭筋を始めとする筋力増強訓練、杖、サポータなど補装具の使用、沈痛消炎剤の投与といった保存療法から開始します。またヒアルロン酸を注射薬とした関節内注射療法は疼痛の軽減、関節可動域の改善効果と言った効果が認められています。そして内反変形が著しい場合は脛骨高位骨切り術、関節破壊が進行している場合は人工膝関節置換術の適応となります。
 人工膝関節置換術は近年の人工関節のデザインや手術技術の進歩により130°以上の屈曲角度が獲得できるようになってきました。
 大腿四頭筋の筋力に合わせ部分加重を開始しますが関節腫脹を注意しながら術後1~2週を目安に一本杖、術後4週には全加重を目指します。また、人工股関節置換術と同様にMIS人工膝関節置換術は疼痛の緩和効果が高く早期リハに有用になると報告されています

 脊髄損傷
 脊髄は脳とともに中枢神経系を構成し、高位中枢と末梢神経間の伝導路、反射中枢、自律神経の介在などの機能を果たします。 精髄は脊椎管の中を頭側から尾側に向かって走っており、頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、そして尾髄に分かれます。 神経線維は脊髄の背外側部の後根と腹外側部の前根の神経根を出入りしており、椎管孔で合流します。 脊髄損傷は多くは脊椎骨折、亜脱臼等に伴って発症し受傷原因は交通事故、転落事故、スポーツ等があります。

 脊髄が損傷されると損傷部位以下の脊髄神経支配領域に四肢、体幹の運動及び感覚障害を来すと共に排尿・排便機能障害、自律神経障害など多様な機能障害が生じます。

 また、損傷部において脊髄の機能が完全に断たれたものを完全損傷、機能が一部でも残存したものを不全損傷に分けられます。
 運動麻痺は脊髄損傷では四肢麻痺、胸髄以下の損傷では対麻痺として出現します。

 C4及びC4より上位の髄節が損傷されると横隔膜が麻痺し自発呼吸が困難となります。
 C4より下位の頸髄損傷でも呼吸補助筋である肋間筋や腹筋の麻痺によって呼気予備量と肺活量が減少し残気量が増加するため、排痰や喀痰が不十分となり呼吸器合併症を起こしやすくなります。
 受傷後しばらくのあいだ、損傷高位に関わらず膀胱排尿筋が弛緩し排尿反射が消失するため閉尿となります。
 仙髄・馬尾神経より上位の損傷の場合は核上型膀胱と呼び、受傷後7週から10週で排尿反射が回復します。
 これに対し、下位の損傷を核型・核下型膀胱と呼び排尿反射は消失したままとなります。
 脊髄損傷では排尿障害と排便障害が併存します。損傷早期では腸管弛緩、蠕動運動低下により腸管内にガスが充満し麻痺性イレウスを発生することがあります。
 腸管運動が回復し始めたら胃結腸反射や直腸肛門反射を利用し排便が可能となります。
 TH(T)5~6より上位の損傷では起立性低血圧や自律神経過反射などの自律神経機能障害が出現します。

 機能障害の評価は損傷部位以下の運動と感覚障害を神経学的な損傷高位と損傷の重症度を評価します。
 神経学的損傷高位は正常な機能が残存する主動筋の筋節と表在感覚の皮膚節によって決定します。
重症度の判定は麻痺域の運動及び感覚機能の残存程度によって決定します。

 代表的なものとしてフランケルの分類やザンコリの分類、ASIAがあります。
 ASIAは米国脊髄損傷協会が発表した脊髄損傷の障害評価法で国際パラプレジア医学会でも承認され国際基準として用いられています。
 具体的な評価は運動スコアを0~5点、感覚スコアを0~2点で評価し共に正常節の番号を表しキーマッスルを決定します。
ADLの到達レベルは運動完全麻痺での患者では、損傷レベルが下位になるほど残存機能が増えるので自立度も高まります。

C4より上位の場合、残存機能は一部の頸部周囲筋のみであるため、舌、頭部などを用いた環境制御装置を活用し電化製品、照明、空調の管理、電動車いすの操作が可能となりますが、その他の身の回り動作は全て全介助となります。
 C4の場合、顎、又は頭部の動きよる電動車いす操作が可能となり、食事動作もスプリングバランサーを用いて一部可能となります。
 C5の場合、ハンドリムを加工した車いす操作が可能となりますが、屋外等の不整地、段差昇降は難しいです。食事、整容等の動作は自立します。
 C6の場合、ベッド上の寝返りや起き上がり動作が可能となります。ベッドと車いす間の移乗動作はほぼ自立するようになり、一部は自動車への移乗、自動車内への車椅子積み込み、自動車運転が可能となります。
 Cの7~8の場合、移乗動作は側方アプローチが可能となり、起居動作、移動・移乗動作を含め車椅子を用いた日常生活はほぼ自立レベルとなります。

 それでは精髄損傷のリハビリテーションについて説明します。
 脊髄損傷の急性期では全身状態の管理、損傷した脊椎や脊髄の治療が最優先されます。
 呼吸機能障害がある場合、酸素吸入を行いながら呼吸パターンの指導、胸郭と肺の可動性の維持・拡大、排痰などの呼吸理学療法を行い、更に明らかな換気不全を認める場合は気管内挿管により人工呼吸器を装着します。
 排尿障害に対しては無菌的間欠導尿法、または、無菌的持続カテーテル留置法を行います。

 廃用性の可動域制限・筋力低下を防止する為に受傷直後から理学療法と作業療法を開始し、関節可動域訓練並びに残存筋の筋力増強訓練を行います。
 受傷後、数週間から6週間程度で座位訓練を開始します。この時期は起立性低血圧が頻発するのでバイタルチェック、自覚症状に十分注意しながら進めなければなりません。
 座位時間が増えてきたら車椅子乗車を開始し、さらに訓練室でのリハビリテーションへ移行します。

 理学療法と作業療法では関節可動域の維持や拡大、残存筋の筋力強化、基本動作の獲得、ADL能力の向上を図ります。また、理学療法では両下肢に長下肢装具を装着し早期から立位訓練を実施し能力に応じて歩行訓練へ移行します。

フランケル分類
Grade程度運動知覚
Acomplete完全麻痺完全麻痺
Bsensory only完全麻痺ある程度(+)
Cmotor uselessある程度(+)
(実用にならず)
(+)
Dmotor useful実用になる
{歩行可(介助可)}
(+)
Erecovery正常
(反射異常はあってもよい)
正常



Zancolliの上肢機能分類

グループ1 肘屈曲可能群

機能髄節レベル:C5-6
残存運動機能:上腕二頭筋、上腕筋
A.腕橈骨筋機能なし:C5A
B.腕橈骨筋機能あり:C5B


グループ2 手関節伸展可能群

機能髄節レベル:C6-7
残存運動機能:長・短橈側手根伸筋
A.手関節背屈力弱い:C6A
B.手関節背屈力強い
Ⅰ円回内筋・橈側手根屈筋・上腕三頭筋の機能なし:C6BⅠ
Ⅱ円回内筋機能あり:C6BⅡ
Ⅲ円回内筋・橈側手根屈筋・上腕三頭筋の機能あり:C6BⅢ

グループ3 手指伸展可能群

機能髄節レベル:C7-8
残存運動機能:総指伸筋、小指伸筋、尺側手根伸筋
A.尺側指完全伸展可能:C7A
B.全指伸展可能だが母指の伸展弱い:C7B

グループ4 手指屈曲可能群

機能髄節レベル:C8-Th1
残存運動機能:固有示指伸筋、長母指伸筋、深指屈筋、尺側手根屈筋
A.尺側指完全屈曲可能:C8A
B.全指完全屈曲可能
Ⅰ浅指屈筋機能なし:C8BⅠ
Ⅱ浅指屈筋機能あり:C8BⅡ


SCF:NPO法人日本せきずい基金HP参照
http://www.jscf.org/jscf/SIRYOU/rihabiri/hyoukasyakudo.htm